第一章 第一話:迷宮への侵入者

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   ☆★☆    『キソラ』 「ううん……」  何かがキソラに話し掛けるが、眠っていてキソラは気づかない。 『キソラ』  再度、声は呼びかける。  それでもキソラは起きない。 『……』  タイミングが悪かったのか? とも考える声の主だが、状況が状況のため、頑張ってキソラを起こそうとする。 『キーソーラー!』  起きる気配がない。  こうなったら、と声の主は仲間たちに協力してもらうことにした。 『キーソーラー!』  大合唱である。  さすがのそれにはキソラも飛び起きた。 「な、何? 何?」  前後左右上下を確認する。 『キソラ』  もう一度呼びかける声の主。 「その声は……どうしたの?」  重要な問題や危険がない限り、彼ら(・・)は無理やり起こしてまで伝えようとはしない。 『キソラ、誰かが迷宮内に迷い込んだ。気になるから調べて』 「誰かいるの?」  キソラの支配下にある迷宮には、キソラ自身が開けない限り、誰も入れないはずだ。  しかも、他の迷宮にも結界と幻惑の魔法はしてあり、そう簡単に入れないはずだ。 『いきなり現れた。かなりボロボロ』 「なっ……!?」  それを聞いて、キソラは慌てて身支度をした。 (いきなり現れたのは転移系の魔法、かなりボロボロってことは、おそらく重傷ってこと!)  声の主――迷宮の守護者からどの迷宮か特定できたため、その迷宮に転移魔法を使いながら向かう。  侵入者がどんな奴かは知らないが、怪我人を放置するほど、キソラは冷たくない。  だが、キソラは知らなかった。  今から起きる出来事に、自身の過去や前世が関わるということを――
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