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『キソラ』
「ううん……」
何かがキソラに話し掛けるが、眠っていてキソラは気づかない。
『キソラ』
再度、声は呼びかける。
それでもキソラは起きない。
『……』
タイミングが悪かったのか? とも考える声の主だが、状況が状況のため、頑張ってキソラを起こそうとする。
『キーソーラー!』
起きる気配がない。
こうなったら、と声の主は仲間たちに協力してもらうことにした。
『キーソーラー!』
大合唱である。
さすがのそれにはキソラも飛び起きた。
「な、何? 何?」
前後左右上下を確認する。
『キソラ』
もう一度呼びかける声の主。
「その声は……どうしたの?」
重要な問題や危険がない限り、彼らは無理やり起こしてまで伝えようとはしない。
『キソラ、誰かが迷宮内に迷い込んだ。気になるから調べて』
「誰かいるの?」
キソラの支配下にある迷宮には、キソラ自身が開けない限り、誰も入れないはずだ。
しかも、他の迷宮にも結界と幻惑の魔法はしてあり、そう簡単に入れないはずだ。
『いきなり現れた。かなりボロボロ』
「なっ……!?」
それを聞いて、キソラは慌てて身支度をした。
(いきなり現れたのは転移系の魔法、かなりボロボロってことは、おそらく重傷ってこと!)
声の主――迷宮の守護者からどの迷宮か特定できたため、その迷宮に転移魔法を使いながら向かう。
侵入者がどんな奴かは知らないが、怪我人を放置するほど、キソラは冷たくない。
だが、キソラは知らなかった。
今から起きる出来事に、自身の過去や前世が関わるということを――
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