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第七話
酒井リョータが小野賢至と再開する数時間前に遡る。
「よっ、桜井。久しぶり」
「アンタ……賢至じゃん。何しに来たのよ」
「冷たい反応だなあ。何年かぶりに友達が訪ねてきたんだぜ、もっと歓迎してくれよ」
「いきなり転校しといて無責任ね。あの後私たちがどんな目になったか」
「おうそれそれ。今日はそれもあってわざわざ九州から来たんだ」
「話が見えないわ。もっと手短に分かりやすく言いなさいよ」
「じゃ、手短に。まだリョータのこと好きなのか?」
「なっ!……なんでアンタがそんな事知ってんのよ。むむむ昔の話よ」
「まだ好きなんだな?」
「…………ぐぐっ……だだだだから何よ!いいでしょ別に!違うクラスだから接点が無いだけだし、文化祭とか超誘うつもりだし!」
「リョータはアホだから、桜井の態度から気づいてくれるなんて思うなよ。あいつはお前のこと女だと思っちゃいねよ」
「うるさいわね!アンタわざわざ九州から喧嘩売りに来たの!」
「んなわけあるか。お節介&罪滅ぼし&イタズラさ。お前とリョータの仲を取り持ってやるよ、めかし込んで後で小学校に来いよ」
「ええっ!?わわ私ジャージしか持ってないんだけど……」
「借りればいいだろう?リョータは意外にギャップに弱い。乱暴者の桜井が、女性らしい格好をするなんて思ってもみないはずだから、きっと意識するはずさ」
「何よ何をするつもり!?ちゃんと教えなさいよ!」
「お前はプレッシャーに弱いから、詳しく知らない方がいい。俺は幽霊になって戻ってきたという設定でよろしく。後はなんとなく話を合わせればいい」
「無理ムリむり!絶対ムリ!出来ないって!」
「俺はなあ桜井、お前のその過激なスキンシップに耐えられるのは、あの怪獣姉をもつリョータしかいないと思ってるんだ。知ってるだろ?」
「うん。酒井こいとさんでしょ、お兄ちゃんと同級生だし、道場で一緒だし」
「頑張れ桜井、お前の魅力でリョータをメロメロにするんだ!」
「メロメロに……わわわ分かった、ややってみる」
「うまく行ったら、明日にでも俺の住んでたマンションに来いよ。ネタばらしするから」
「えっ、ばらしちゃうの?」
「当たり前だ。イタズラはバレるからイタズラなんだ。じゃ待ってるからすぐ来いよ」
冒頭へと続く。
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