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《2》止まらぬ想い。
「烈火!! 馬鹿なのか、お前は!?」
開口一番、烏丸脩司は、頭ごなしに俺を怒鳴り付けた。普段は無口で穏やかな男が、これまで見た事も無い程、激怒している。
脩司は、《火の星》の東天を預かる武闘派の四天だ。『三度の飯より筋トレが好き』という変人で、見た目も武骨だが中身も粗野だ。
年齢33歳。
《火の星》の四天衆の中では最年長で、性格的にも真面目な男だ。頭が硬いし、反論すれば正論でやり込められる。空気が読めない事も多いが、基本的に優しい奴で、滅多に怒りを表さない。
そいつが、頭から煙を出して激怒しているのだ。それ程の事を、俺はやらかしてしまったのである。
怒れる脩司は、山門の仁王像そのものだった。太い眉毛を不機嫌に寄り合わせ、眉間に深い皺を刻んでいる。そうして、太い腕を高く拱いて言った。
「一体どういうつもりなんだ、お前は?! 法要中だぞ?集中力が足りないんじゃないのか!?」
地の底から響く様な重低音の声と、鬼の様な形相が、俺を威圧する。いちいちお説の通りなので、俺はしゅんと肩を窄める。
脩司の説教は、続いた。
「お前、最近、弛んでいるぞ!折角、首座さまが御光臨下さったというのに、無様な姿晒しやがって!──いい面の皮だ!!」
「………」
返す言葉も無い。
幸い、軽い火傷で済んだし、火も直ぐに伏せられたが…先代から受け継いだ僧衣と袈裟は、台無しになってしまった。
…親父の…形見だったのに。
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