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…それにしても。
薙は一体、何処に行ってしまったのか??
当てずっぽうで、足を向けてはみたが──
本当に、この敷地の何処かにいるのか?
勘だけを頼りに、さ迷い歩く春の庭。
少しの不安に駆られながら、俺は、更に奥へと進む。
暫く行くと、見事な瓢箪形の池が見えて来た。
借景に頂く山々と、見事に調和している。
まるで、日本画の中に入り込んだかの様だ。
空を映す鏡の様な水面。
優雅に回遊する錦鯉。
池の畔を歩けば、やがて、対岸へと渡る赤い太鼓橋が見えてくる。
その時であった。
美しい半円を成すその上に、白い着物を着た小さな人影が見えたのは──
「薙……!?」
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