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それから、一時間後──。
宴も酣な大広間では、飲み過ぎてリタイアする者が、ぼちぼち現れ始めていた。
真っ先に酔い潰れたのは、《土の星》の当主──向坂紫である。可愛い顔をして腹黒な紫は、頭は良いが酒はカラっきしだった。
こいつも薙に気があるらしく、事有る毎に気を惹こうとしている。しかし、肝心の薙が色恋沙汰に疎い為、その企みは、悉く失敗に終わっていた。
今日も結局、薙より先に潰れてしまった紫は、北天の向坂隆臣に担がれて早々に退座してしまう。打算的な男だが、こういうところが憎めない。
片や。酔ってくだを巻く大人達を他所に、年少組の当主達──《木の星》の蔡場篝、《風の星》の神崎瑠威と瑠佳──は、冷静だった。オヤジ共の醜態に呆れ果て、巻き込まれる前に、さっさと退座してしまう。
現役中高生の彼等が、『大人の世界』の洗礼を受けるのは、まだまだ先の話だ。
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