二段目。-再会side-

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最後に、一番目障りな《水の星》の当主──姫宮蒼摩が退席した。その際、ほんの一瞬だけ目が合ったが…蒼摩は、俺に軽く会釈をしただけで、互いに言葉を交わす事はなかった。 火邑家に対抗意識を燃やす姫宮家には、俺としても複雑な想いがある。火と水の相性が悪いのは、昔からの事だ。これには、六星一座特有の決まり事が関係している。 万が一、《金の星》が首座を立てられない時の為に…六星一座には、代々、首座の継承順位が設けられているのだ。 火、水、土、風、木の順で、一座の格式番付が定められている。姫宮家は、火邑家に次いで、三番目に首座の継承権を持つ一族だ。 《水の星》の北天・水嶌浬(みずしまかいり)は、姫宮家が火邑家より格下とされている事に、常から不満を抱いている。いつか、この不文律を覆そうと、虎視眈々と機会を狙っていた。 …浬は、自分が溺愛する姫宮蒼摩こそ、五家の当主の中で最も優れていると信じているのだ。 確かに、蒼摩は優秀だ。 奴に比べたら、俺など、親の七光で当主になった、薄っぺらな行者に見えるのかも知れない。 …まぁ。その見解は、概ね当たっている。 一方で。浬の歪んだ評価を、キッパリ否定出来ない俺自身も、ちょっとどうかと思ってはいるが。
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