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ゆっくり歩いて、俺達は瓢箪池の赤い太鼓橋までやって来た。
今朝まで水面を覆っていた氷はすっかり溶けて、澄んだ水の中を、赤や白の巨大な錦鯉達が回遊している。時折、ポチャリと水音をさせて鼻先を上げる様子は、まるで俺達の行動を盗み見に来た様に思えた。
「いい天気だね。太陽の周りに彩雲が出ている。」
気持ち好さそうに伸びをする薙。
空に向かってグンと突き出した両腕。
淡い水色の着物の袖がスルリと肩口まで滑り落ち、真っ白な細い二の腕が露わになる。俺は、ドキリと胸を鳴らして言った。
「お前ねー…少しは恥じらいってものを持てよ。 女の子だろ、一応。」
「あはは、ごめん。烈火と一緒にいると、つい自分が『女の子』だって事、忘れちゃうんだよね。」
「どういう意味だよ、それ?」
「うーん…烈火って何て言うか、『近所のお兄ちゃん』みたいな気易い感じがあるんだ。だから、ついリラックスしちゃうのかも。」
『近所のお兄ちゃん』か…
まぁ、そんなところだろうとは思っていたが、本人に面と向かって言われると、なかなかに堪える。
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