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サァァァ───
二人の間を、生暖かい春の風が吹き抜けて行った、吹き上げられた冬枯れの木の葉が、ひらひらと舞い降りて池の表面に着水する。
ポチャン。
一際大きな水音を立てて鯉が跳ねた。
忽ち水面に、波紋が拡がる。
それは薙の心を、そのまま反映している様に思えた。
「薙、お前の答えは?」
「…答え…」
「遠慮しなくていい。お前の正直な気持ちが知りたいんだ。言ってくれ。でないと俺は、いつまでもどっち付かずのままだ。」
「烈火…」
「俺は期待してもいいのか? それとも全く見込みが無いのか…どっちだ?」
「──。」
薙は、とうとう目を伏せてしまった。
迷う様な、躊躇う様な眼差しが、池の水面に向けられる。
性急に迫る俺に、戸惑いを隠せない薙。
一体、何をしているのか、俺は?
こんな風に追い詰めて…ただ、薙を困らせているだけではないのか?
だけどそれでも、訊かずにはいられない。
「はっきり言えないのか。それが、お前の『答え』なのか?」
「…それは…」
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