228人が本棚に入れています
本棚に追加
/218ページ
二段目。-再会side-
《1》好みの女。
──海江田道虚との『行比べ』から、凡そ三週間程が過ぎた。
六星一座に入門を許された孤独な山行者は、首座である甲本薙の命令に従い、《火の星》の正式な門人となった。
毎日の読経修練に励む傍ら、北天部で六星体術を習っている。若い頃に空手を習っていたとかで、年齢の割には上達が早い。
掃除や片付けなどの下座行にも努め、仲間とも上手くやっているようだった。
──片や。
ダメ北天の雨城悠希は、首座に対して、数々の無礼を働いた咎で、二週間の懺悔行を課せられている。
山奥の堂に篭もり、不眠不休で読経して、滝に打たれて、また読経…という、ハードな修練だ。身から出た錆でしか無いので、同情の余地は全く無い。
俺は、と言えば──
薙とのドライブデート以来、夜もろくに眠れずにいた。
薙の事を想う度、『あの男』の顔がチラついて、何やらモヤモヤした気分になるのだ。
最初のコメントを投稿しよう!