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私の名前はマリア・ジョセフィーヌ。
この国の始祖を築いた由緒正しい五大貴族の末裔であり、男児のいない我が家では私が次期当主よ。
次期当主として、学業に励み、有能な人間を私の傘下に入れて、富をさらに築く。
今日もそんなことを夢見ながら寝たら、摩訶不思議な場所へと誘われた。
周りは真っ黒でほとんど見えない。
ほとんどというのは見える物もあるから。
そう、白い口とそこから覗く歯だけだ。
「会えてよかった」
白い口は喋り始める。
異様な光景だ。
き、キモい。
何ですの、あなたは?
「いきなり、これか。まあ、この時の君はそんな感じだよね」
勝手に失望して、勝手に納得する。
失礼な口だ。
あなたは目よりも口が物を言うのね。
「君には今この空間と僕はどう見えてる?」
見渡す限りの暗闇と明らかに浮いている口。
自分の姿すら暗闇のせいで見えない。
真っ暗よ!
そして白い口!
明かりくらいないの!
その言葉に白い口は口を閉ざす。
何かを話そうとしてまた閉じる。
焦ったい。
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