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私は唇を噛む。
それは悔しさからの行為に見えているだろう。
私は何も喋らない。
ウィリアノス様が来たので、私は彼に背を向ける。
「おい、マリア! 何でお前が違反なんてするんだ! 優勝間近なんだぞ! 」
ウィリアノス様は私を気遣ってくれる。
少し前は私と出会っても興味無さげだったのに、今では私の身を案じてくれる。
「いいえ、これは誰かが私を貶めようとしているだけですわ。これから、弁解しに行きまーー」
「あら、証人がたくさんいますわよ。あなたのせいで家が借金まみれになった可哀想な方々が」
私の言葉を最後まで言わさず、アクィエルの後ろに十人の貴族が立っている。
全員、私が過去に粛清した刃向かった者たちだ。
「さあ、あなたたち、見たことをそのまま正直に言いなさい。不正をした事実を」
その中の一人が前に出て私を見る。
それは意思が決定した目だ。
覚悟をしている目だ。
力強く、私に刃向かった時と同じ強い目だ。
「ええ、不正をしていました。このーー」
その子は指を向ける。
アクィエルに向けて。
「アクィエル様がね!」
「ーーえ?」
アクィエルは狼狽える。
味方であるはずのアクィエルを指している。
私は不気味な笑いをしながら振り返る。
「ま、マリア?」
ウィリアノス様は顔が引きつっている。
私が気でも狂ったのかとそう思っている顔だ。
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