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アクィエルは膝から崩れ落ちる。
完全に心から敗北を認めたのだ。
涙が溢れ、そのまま下を向いて唇を噛み締めながら嗚咽を我慢する。
五大貴族としての最期の意地が号哭を許しはしない。
正直、アクィエルのことは大嫌い。
でもあなたは昔の私と変わらない。
私は私を変えるきっかけがあった。
誰だって間違えるもの、そしてやり直せる。
次は私がーー。
「アクィエル・ゼヌニム立ちなさい!」
私の声にアクィエルはビクッと体を震わせる。
顔を上げ、ゆっくり立ち上がる。
これから自分にどのような仕返しがあるのか気が気でないようだ。
死刑される罪人のように、彼女の目は怯えている。
「理事長先生、どうかこの者の退学は許してくださいませんか」
アクィエルは驚き、目を見開く。
アクィエルだけでなく集まっている全員が驚いている。
「一番の被害者はあなたのはずですよ、マリアさん。彼女を許すのですか?」
理事長の目は厳しかった。
私が満足のいく答えを言わなければ認めない、学校の長として私に問う。
「いいえ。ですが私もこの学校で……この一年で学びました。私たちは人との繋がりで生きているのだと。だから彼女にも学び直して欲しいのです。人とは何か、縁とは何かを」
理事長は私を見つめる。
数秒間の沈黙が流れ、その表情を崩した。
そしてアクィエルに体を向ける。
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