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吾輩には前世の記憶がほとんど無い。記録を見る限り、日本という極東の島国の、それなりに大きな地方都市で、医科大学の優秀な外科教授として働いていたらしい。だが、間抜けなことに自身が治癒不能な癌を患い、程なく命を落としてしまった。
しかし、その才能を惜しんだ我がチョーカー首領の計らいにより、遺体は密かにすり替えられ、吾輩はこうして首領様の忠実なる下僕、改造人間として生まれ変わったのだ。
ちなみに、吾輩の復活後最初の仕事は、その大学のウカイとか言う学長を拉致して怪人に改造した事だったのだが、無論その人選そのものには何の他意もあろう筈もない。
にもかかわらず、あの被験体の吾輩を見ての怖がり様は尋常では無かったな。あれは、一体何故だったのだろう?
まあいい、ともかく、今の吾輩は誠に充実した毎日を送っている。何より素晴らしいのが24時間、好きなオペに没頭できると言う点だ。組織にとって怪人製造の需要は大きく、それでいて一体の怪人を作りあげるには非常に時間が掛かる。寝食を忘れるとはよく言うが、そもそも寝食を必要としなくなったのだから、まさに無敵という訳だ。
それに今の吾輩はオンラインで手術マシンをコントロール出来るから、何処に居ようがオペが出来る。そんな事よりも何よりも大切なのは、煩わしい倫理委員会のクソったれ…いや、失礼。些か熱が入りすぎてしまった。各種の煩雑な手続きから解放された、と言うのが何にも増して重要と言う事を言いたかったのだ。
まあ、そんな事よりも素晴らしいのは我がチョーカー自慢の最新医療体制が生み出した怪人の数々だ。もちろん、この吾輩が手ずから改造を施したのだから当然ではあるのだが、世界の各国に支部を置くチョーカーにあって、我が日本支部の生み出した怪人たちは、強さ、恐ろしさ、そして再生の容易さにおいて、群を抜く評価を得ているのは吾輩が常々自慢とするところだ。
そう、あの欧州支部の高慢な…いや、彼の事はいずれまた語るとしよう。今日は些か語りが過ぎたようだ。では吾輩は仕事に戻るとしよう。
『全てを我が物に。我が物は全て総統閣下の物に。ヘル、チョーカー!』
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