第一話:吾輩は人呼んで死神教授

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第一話:吾輩は人呼んで死神教授

 「よし、これで良いだろう。電源を入れたまえ。」吾輩の重々しい声に、戦闘員達が甲高い声で答える。  「ギュルル!」  そして数人が出来上がった”作品”に次々にプラグを差し込み、遂に一人の戦闘員が準備完了を告げるため、吾輩に向かってナチス式の敬礼をして見せた。自分でも気取っていると解る態度で会釈をすると、そいつはコントロールパネルから起動ボタンを押し、ゆっくりとダイヤルを廻し始めた。  低く唸っていた電源がインバータ装置に接続され、キイイイ…と音を立てる。手術台に乗せられた吾輩の作品に、惜しみなくエネルギーが注がれて行く。そして、ついにその時が来た。  手足が不規則にビクビクと跳ねる。美しいダンスだ。と吾輩は思った。さあ、蘇るが良い、我が愛しき作品よ!  手術台からむくり、と起き上がった怪人は、一声恐ろしい唸り声を上げると、手近に居た戦闘員にいきなり襲い掛かった。鋭利な刃物に改造された腕をまともに喰らい、真っ二つに切断される戦闘員。断末魔の悲鳴を聞いて、慌てた様子で他の戦闘員が止めに入るが、瞬く間に返り討ちに遭う。ふ、馬鹿な奴らだと吾輩は僅かに口角を上げた。  不意に、怪人の目が吾輩の方を向いた。一瞬だけ、その瞳に理性の様な輝きが閃く。だが、それも束の間、再び光を失った目をうつろに見開いたまま、奴は吾輩に向けて突進して来た。  役立たずの戦闘員共が凍り付いている間に、コードを引きちぎりながら突進してくる怪人。だが、吾輩の眼前数センチのところまで手を伸ばしながら、その動きは突如として止まった。そう、吾輩が愛用のステッキ、その持ち手に埋め込まれているパワークリスタルを起動し、奴の鼻先に突き付けてやったからだ。  「グゥオアア!」怪人が苦悶の叫び声を上げ、両手で顔を覆いながら床をのたうち回る。吾輩は容赦なくクリスタルの出力を上げた。やがて、怪人は平伏し、屈従の儀式は完了した。  「連れて行け。」「ギュルル!」戦闘員が両腕を抱え、半ば引きずるようにして怪人を部屋から連れ出し、今日のオペはこれで完了…いや、まだやり残したことがあったな。  床に倒れた戦闘員共の死骸を一瞥し、言う。「こいつ等の再生手術を行う。」そしてクールに、こう付け加える。「使えるものは、何度でも再利用せねばな。」残りの戦闘員が賛嘆のため息を漏らす。ふ、ちょろい物だと吾輩は思った。  我が名は死神教授。世界の征服を目論む秘密結社チョーカーの最高頭脳にして伝説の外科医。それが吾輩である。
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