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白熱した別れのシーンの相手は、僕は一方的に知っているだけの女子生徒。隣りで、振り払われて、スクールカバンで叩かれる男子生徒。そんな別れのシーンは、さすがの僕も見てしまった。
彼女は騒がしくて目立つ集団のなかにいる、小粒でもピリリと辛そうな、同学年の三年生、“如月蒼葉”と書いて“アオハ”と呼ぶ。
「“ル”でもつけば、それこそ“アオハルちゃん“だったよなあ。一年生、帰ったあとでよかったねえ」
そう、無闇に“アオハルちゃん”なんてことを、口にしたのが不味かったのか、遠くの部室棟に、思わず立ち寄ったのが悪いのか。そんな如月蒼葉から、近くに寄ってくるとは思いもよらない事態へと、そのあと発展することになった。
部室棟から見えるグランドから学校から出る正門には、まだ青春を謳歌している部活も始まっていない時間帯で、そんな中途半端な時期、始まってそうそう終了でもしたの男女の別れがひと組、そして僕。
高校生活の、最後の5月の連休といえば、ゴールデンウィークのことだ。その白熱した別れは勝手に目に飛び込むレベルだった。
僕は保武高史朗という男子高校三年生で、今は“なんの変哲もない”を絵に描いたような高校生活を送っていた。
アオハルちゃんと、バッチリと目があってしまったのである。
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