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「はぐらかすなよな。教えたら、このA定食大盛り食券を」
「そうです。一応、今年が最後の夏だろーってな、ほい、くれくれ」
パチンと勢いよく手渡すと、真っ黒な顔に笑う白い歯が見える。
「メシのために、話しにのるオトコ、木坂だな」
「だって、おまえは大盛りじゃなくても、こと足りるだろ」
振り返って、後ろ向きにだらしなく歩く木坂。
「ああ、それは確かだな。有酸素運動したくねえから」
(でも今日は、いつもより腹が減っているんだけど……ああ、朝いつもよりはやかったから、しゃあないな )
木坂の後ろに購買で買った戦利品を、パタッパタッと小走りな音がした。
「うおッと、ああ、大丈夫?」
ドンとした衝撃音で、パタッパタッ音の小さなオンナの子は、戦利品を見つめてしょぼーんとしている。というか、如月蒼葉じゃないですか。
「大丈夫だった、怪我はしてない?」
「えっと、はい。パンが落下しただけですって、あ、秘密く」
「うわッと、木坂なにやってんだーッ俺も手伝うぞッ! ほいッ、どうぞー!!」
クスッと笑って「なんかありがとね」と言うと、蒼葉は走る途中に小声で言う。
「ありがとッ秘密くんッ」と、腕いっぱいに振り返っては、右手で手をふって走り去って行った。
「おい、高史朗くん。小さくても聞こえたあの秘密くんってのはなんのことだね?」
「えっと、いやいやッいやッなんでもないッ!」
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