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床にへたり込んだまま、下からキッと僕を睨み言う。透けるように白い肌に、真っ赤になったくりくりの目が、とても印象的でもあった。
(断るともっと、めんどくさいことなるのか? なんだこれッ! でも、案外、おもしろいな、この小粒ちゃん)
― “案外、おもしろいな” ― これが最大の理由だ。
その日、言われるまま、僕は彼女の栗色の髪を切るという。彼女は黙って揃える間黙っていた。彼女、如月蒼葉は、なんともベタな選択をする。僕はそんなことを思いつつ、彼女の髪を整える程度に揃えていく。
さっきまでの慌ただしさは、何処へ行ったんだろうというくらい。彼女は、ただジッとして黙って髪を僕に委ねる。なんか、変わったオンナだなと思いつつも、僕自身、初めての経験で思考力がなくなっていたのかもしれない。。
僕は少しだけ、この如月蒼葉というオンナに興味を持ってしまった。
「如月さんは、ちなみにですね。こう、髪を切るっていうのは、どういう心境でしょうか……?」
そう聞くのが精一杯の僕に彼女は答える。
「どういうっていうか、そッそんなの失恋の醍醐味でしょうッ! そうでしょッ? ……ねえ、それよりさ、気付いたんだけど、君はさっきからなんで、如月さんって呼んでるのかなと?……なんで、私の名前、知ってんのかなあ?」
急に振り返って聞き返す彼女の目は、赤く、因幡の白兎とでもいうのか。不審な顔を向けたと思えば、今はもう興味深々の顔をしている。
「いやぁ、一応は、おんなじ学年だしですね、そう教室も、隣りのクラスなんですがぁ。まあ、一番は、派手だからというか、有名だったから、三年のがくねnはみんな知ってるかと?」
“派手だから”続けて言いたかった。だけどカットです。
有名だからではなく「失恋で髪を切るという。なんてベタな行動をするんだ」だった。ただ、言えばまた暴れては大泣きするんじゃないのでは、と思うと、僕は心のなかでしか言えなかった。
「そっか、三年生はそれは知ってるのかもね。うん、そっかぁ、納得した。ねぇ、君も三年生なんだよねぇ。あり得ないくらいに幼くみえるんだけどなんでかな。童顔ってわけでもないし、伸びたのは身長だけって感じに見える。……ねぇ、ねぇ、ちょっと、聞いてるの? それで身長はどれだけあるの?」
「それで、の、身長は180センチほどですよ?」
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