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レベル1
人生の岐路はいつも目の前に存在している。
例えば、パイプ椅子があったとしよう。そこに腰掛けると、前方にPCとそれを支える机がある。その右側には引き出し付きのカラーボックスが備え付けられている。左側は壁であり、腰掛けた人物は椅子の背もたれには飽きて、そちら側に身体を倒す。
すると警報が鳴り響き、カラーボックスのさらに右にあるドアの上方から、鉄の板が勢いよく飛び出して、ドアを閉鎖した。
あまりのことに、唖然となる。実はこの部屋には、ドアは一つしかないのだ。加えて、窓は鉄格子で仕切られており、密室となったのである。
この場合にどのような行動を取るべきか?
1 PCで外との連絡を取る
2 スマホで助けを呼ぶ
3 カラーボックスからグリーンのタヌキを取り出す
4 閉鎖されたことをいいことに、PCのみで悠々自適な生活を送る
ここで迷わず3を選び取るのが、バイゼルハイムという男である。パイプ椅子から速やかに立ち上がり、カラーボックスの前で直立する。恐る恐る、白手袋をはめた左手で、引き出しを半ばほどまで開けた。そこに見える景色からは、何かが入っている情報は得られない。しかし、彼は勢いよく右手を差し込んだ。
「手応えあり」
バイゼルハイムの低く良く通る声が木霊した。彼は額に汗を垂らしている。そして、汗が鼻にかかるころに、己の渾身の力を持って、右手を引き抜いた。すると。
確かにそこに現れた。グリーンの何かしらの物体が。それはバイゼルハイムの右手をはねのけ、むくむくと天井へ向かって伸びていく。そして、そのグリーンは、引き出しどころか、カラーボックスの全てを粉砕し、己の存在を誇示したのである。
その成り行きを待っていたかのように、突如、轟音が鳴り響いた。その音の根源は、バイゼルハイムのすぐ隣のPCの後方の壁であり、音が鳴り止んだ頃には、PCや机、パイプ椅子の破片しか残されていない。そして、PC側の壁とは対面の壁に、人間大の鉄球が埋まっていた。
しかし、バイゼルハイムは動じない。なぜなら彼の関心はグリーンの何かしらにあるからだ。彼が眺めるそれは、天井につこうかというほどの身長を持ち、横幅はバイゼルハイムの3倍もあるのである。その姿を確認し終えたバイゼルハイムは、白手袋をはめた両手の拳を握りしめた。
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