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「やめてぇぇ! 来ないで! お願い!」
ラフなポニーテールをした女性がグリーンの何かしらに飲み込まれる。それは、受動的な行動しか起こさない魔物であったが、今は積極的に活動を行っている。なぜなら、グリーンはあまりにも巨大になりすぎて、サファイアの瞳では、獲物を呼び込むことが、困難となったからである。その大きさはいかほどのものか? 周囲に広がる家々よりも遙かに高く、その背丈は、ゆうに20メートルを越えるていると推察できる。
ただ、この荒廃した日本においては、珍しくないサイズである。魔物達は常にどこにでも居て、特に大きい魔物ほど目に止まる。それは100メートルを越えるものも存在し、グリーンと同様のサイズの魔物など、その辺りを幾らでも徘徊しているのである。
それらは、確かに強く恐ろしいが、たった一丁の拳銃でも、やり方次第では倒すことができる相手である。むしろ、恐ろしいとすれば、軽快で数の多い厄介な小さい魔物達であろう。
ところが、グリーンの何かしらは、それらと一線を画する。あらゆる攻撃がまるで通用しないのだ。その事実を知った、警察官ガスティーニは渋く、暗い声を放った。
「バイゼルハイムの野郎。ふざけた奴を作りやがって!」
同僚の赤髪のベンスが蒼白の顔で、グリーンの何かしらを見上げている。それはそうだ。日本にあった、戦闘機や戦車が備えた、あらゆる兵器の全てが威力を発揮することなく、全て飲み込まれたのだから。それらの兵器で簡単に抹殺できた、魔物達とは大きく異なるのである。そこで、再びガスティーニの渋く、暗い声が響いた。
「おい。物理的な兵器じゃ無駄だ。毒だ。毒。はぁ? ないって? そんなもの科学者に頼めば、幾らでも作れるだろう。てめぇらは安全な所にいるからって、甘ったれたこと言ってんじゃねぇ!」
無線機に怒鳴り散らすガスティーニ。その圧力に赤髪のベンスは身体をびくと動かした。少しばかり気が小さいようではあるが、この摩訶不思議な戦場にて、己の使命をこなしているのだから、勇敢な警察官と言えよう。
その赤髪のベンスは、自身の仕掛けた地雷原に、グリーンの何かしらが侵入したことで、息を呑む。そこでは確かに爆発が起こった。けれど、その爆風も高熱も、グリーンの何かしらに取り込まれてしまう。赤髪のベンスは、落胆しつつも、ガスティーニに事実を告げる。
「もう。止める手段はありません。先輩の仰る通り、生物兵器が作られるまでは、やつの独壇場でしょう」
ガスティーニは日本人の男らしい自身の黒髪を、右手に収める。これは彼なりの考える仕草なのだ。その考えとは、目の前のグリーンの何かしらをどうにかすること。そして、この混沌とした日本の。いや、世界の破滅的な状況を打開する手段をである。
フロア 1階
対象 グリーンの何かしら
危険度 S
状況 死者40人以上、100羽、30頭、40匹程度の損害。依然として巨大化は止まらず、このままでは世界最大の魔物となるだろう。対処法は不明。
フロア 地下1階
対象 四手草
危険度 C
状況 保留
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