レベル-2

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 バイゼルハイムは紳士である。すわち選び取るのは3である。彼は迫る地面に当てている両手に僅かに力を込めて、自身の下方に覗く、地面の切れ目に顔を向けた。 「貴様は何者だ」  恐ろしい男、バイゼルハイム。それが生命であるかすらも、見当が付かないにも関わらず、身元確認を行うのである。いや、彼にはその確信があるのであろう。でなければ、あのように疑いの欠片もない顔をしてはいられないはずなのだ。そのような光景を目にした、天井にいる存在が、不快でよく響く声を紡ぎ出す。 「ただ壊せばいい。命などありはしないのだから。無機物だぞ? どうかしている。思い出せ。故郷を廃墟にした記憶を。俺を楽しませてくれ」  コウモリ男の声に反応を示さないバイゼルハイム。なぜなら彼は目の前の地面の切れ目と、僅かながらでも意思疎通を図ろうとしているからである。だが、それには意志は感じられない。迷宮に潜む罠のようなものであり、仕掛けた者とならば、交渉は可能かもしれないが、罠に問い掛けたところで、その言葉が報われることはないだろう。だが。 「貴様は何者だ」  バイゼルハイムの意志は硬い。その頑固さの硬度は、迫る地面の厚みですら、決して敵わないだろう。その事実が伝わったのだろうか?   地面の隆起は止まり、それどころか徐々に築き上げた己の山を低くしているのである。そして、元あった部屋の形へと戻りつつある。これは一定時間で解除されるような罠の性質なのだろうか?  それとも? 1 だらしない奴だ 2 これでは遊び甲斐がない 3 知性など必要ないのだ 4 心に秘めるべきは、怒りと憎しみ。これだけで十分だ
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