28人が本棚に入れています
本棚に追加
意を解さない相手に対して、行うべきは、敵意がないことを示すこと。なおかつ、その者にとって、有益となり得るものを提供すること。それは、交渉をする上で有効な手段である。だから、バイゼルハイムは3を選択する。差し出した右の白の手を一度しまい込み、決意を固めて、もう一度、高く手を上げる。そして、己の腹に、右の白の手を勢いよく差し込こんだ。
「てぇ、ご、た、え、あ、り」
バイゼルハイムの消え入りそうな、か細い声が僅かに響く。バイゼルハイムは全身に汗を垂らしている。それが、土壌に水溜まりを作ったころ、バイゼルハイムは右手をなんとか引き抜いた。すると。
確かにそこには現れた。人間大の肉の塊が。それは球型状であり、生々しさは感じない。加工された食品のようである。もちろん、これがバイゼルハイムの肉である保証はどこにもない。
バイゼルハイムは肉の塊を土壌に下ろし、両手で静かに前方へと転がしてゆく。そして、爬虫類の鼻先の間近に動かぬように圧迫して、安定させた。解放された両手の内、右の白の手で、地面のほの暗い明かりを持ち、そこに広がる景色を眺めた。
黒の瞳に映るのは、肉の塊に食らいつく、ワニの顔をした四足歩行の生物達。それらからは敵意はまるで感じない。むしろ、毛に覆われた尻尾を振って、バイゼルハイムに近づく個体すら存在する。
これはなんという生物であろうか?
1 ワニ?
2 トカゲ?
3 犬?
4 猫?
最初のコメントを投稿しよう!