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「凄いスタイル!?」
赤髪のベンスは、扉が開いた直後に、目に入り込んだ芸術に囚われた。それは豊満な胸に、すらっとした腰回り。そして、美しい筋肉が全身を覆っている。その芸術は磔にされており、標本のようだ。
「そうだろう? サトリーヌは傑作さ」
白髪の女性が己の金の瞳を輝かせて、唇を動かしている。その光景を目の当たりにした黒の瞳。ガスティーニが渋く、暗い声を放った。
「こんな所で素っ裸で置いとくな。目障りだ」
煙草を吹かしながら、白髪の女性の部屋に堂々と侵入し、手近にあった椅子に腰掛け、テーブルに両足を載せる。その様子に不快感を示すでもなく、むしろ歓迎を示している白髪の女性の、しなやかに、ほどよく霞んだ声が響く。
「『魔王』は中々だっただろう? あれはあれで傑作さ」
ガスティーニは黒の瞳で、白髪の女性の身体を下から上まで、じっくりと眺め、金の瞳に目を合わせた。
「そんなことよりも。てめぇが男か女か。ハッキリとしてもらおうか?」
くるっと回転した白髪の女性。さも自身の身体を見せ付けるかのように。しかして、白衣に阻害されて、その全容は未だ謎だ。
「それは私にも解らないな~。バイゼルハイムにでも、聞いとくれ」
その解答に煙草を握りつぶすことで、ガスティーニは反応を返した。
「仕方ないだろう? 私にしてもサトリーヌにしても、悪魔の眷属なんだから」
飄々と言葉を紡ぐ、白髪の女性は楽しそうである。日本人らしい黒の髪の男とは対照的だ。
「ベンス。てめぇ。いつまで眺めてやがる。このスケベェが」
机を己の足でたたき割ったガスティーニが直立し、不甲斐ない同僚に活を入れる。思わず飛び跳ねた赤髪のベンスは、非常に申し訳ない様子をしている。そして、標本のように磔にされたサトリーヌに頭を下げた。
「先輩。用事は済みましたか? それなら博多の戦線に……」
赤髪のベンスが振り返ったところ、鬼に勝るとも劣らない黒い瞳の顔が、目に入る。ベンスは借りてきた猫のように首根っこを掴まれて、部屋の外へ投げ出された。
「私も混ぜて欲しいなぁ♪」
楽しげな様子の白髪の女性が正直な意見を放つ。怖気が走ったのか、ガスティーニは身体を震わせる。そのことに気を良くした白髪の女性。その身をガスティーニの傍に寄せる。そして。
しなやかに、ほどよく霞んだ声がする。
1 悪魔化計画かな?
2 バイゼルハイムかな?
3 人類進化理論?
4 どれも順調さ。ご心配、召されるな
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