少女の名はエミル

2/2
前へ
/13ページ
次へ
「………ホントに?」 「………えぇ。だって、さすがに名前が無いと、何かと不便でしょ?」 「………確かに。それは、………アリガトウ。」 エミルと僕の二人は、ひたすらに名前を考え始めた。………のだが、中々思い浮かばない。色々と候補は上がって来るのだけれど、………その時、唐突に地表が僅かながらに揺れ始めた。 「一体、何が起こってるんだ?」 しかし、やがて、地表の揺れは鎮まった。 エミルが言った。 「又、アイツ等が暴れてるのね………。」 「………アイツ等って、何?」 エミルは、話し始めた。 「………実はね、此処から東へ向かう途中に、帰らずの平原って呼ばれている場所があるんだけれど、………その近くに、ヒュランダルの遺跡って言う場所があるの。」 「ヒュランダルの遺跡………。」 「でも、最近になって、其処に住み着いてるヒドラって言う聖獣が暴れてて………。私にはどうする事も出来なくて、困ってるの。何か、悪い事の起こる前触れじゃなきゃ良いんだけど。」 その時、僕は思わず、口走ってしまった。 「………僕が何とかするよ。」 「………えぇ?………でも、何とかって。」 「取り敢えず、僕に、その洞窟の場所を教えてくれないか?………此処で何もしないで指を咥えてても、どうにもならないし。其処へ行けば、何か活路を見出だせるかも知れないから。」 「………分かったわ。その代わり、私も一緒に付いて行って良い?」 そして、僕はエミルに誘導されて、そのヒュランダルの洞窟へと向かうのだった。 洞窟の内部は、物凄く入り組んでいた。下へ上へ右へ左へ………。一体、誰がこんな洞窟を作り上げたんだろう?所々に、炎を灯す灯籠が石造りの壁に取り付けられている。明らかに、何者かによって人為的にこしらえられた事の証である。 しかし………。 ヒドラって、誰が産み出したんだろう? エミルは、ヒドラの事をアイツ等と言った。即ち、ヒドラとは単体では無い事を意味している。どのくらいの数のヒドラが暴れてるんだろう?果たして、僕に太刀打ち出来るのだろうか………。 そんな不安は少しはあったのだけれど………。 しかし、その後、そんな不安も震撼させる事態に遭遇する、僕とエミルなのであった。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加