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繭のものらしきクロスワードの雑誌と、古い本がカウンターの端に投げてある。
手際良くコーヒーぜんざいを作り始める繭をほとりはぼんやりと眺める。
この店は喫茶店としては流行っていた。
この町に似合わないお洒落で綺麗な店主が、女子高生に人気だからだ。
いや、彼女らには、これがゲイかもしれないという噂が流れているのがツボなのかもしれないが。
そして、それは根拠のない噂話ではない。
にしても、綺麗な顔だな、とほとりは改めて、繭の顔を眺めた。
身長はあるけど、線は細いし、男らしい環とは対照的だ。
繊細で色素が薄い感じの繭は、こんな柔らかな陽の光を浴びると、まるでこの世のものではないかのような雰囲気を醸し出す。
中身は結構普通なんだけどな、と思っていると、はい、とすぐに出来上がったコーヒーぜんざいを出された。
和食器も洒落ている。
食器でも、些細な小物でも、繭はいつもセンスが良かった。
「でもさー、ほとりさんは、なんですぐ此処に来るの?
僕は暇つぶしになっていいけどさ。
都会の匂いが恋しいなら、貴女の旦那が一番でしょうに。
ハイセンスで男前。
はっきり言って、町で浮いてる」
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