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自分たちの口に出せない不満をバッサリ切ってくれるから、彼女らは繭を慕っているのだろうか。
「でもさ、子供の頃からずっと好き、とかあるでしょ」
「ピュアだね、ほとりさん」
と自分はそういう経験はないのか、繭は笑っている。
「でも、そういう人がなんで、見合いとかしちゃうの?」
「させられたのよ」
「環じゃ不満なわけ?」
いや、そういうわけでもないのだが……と思っていると、
「でも、見合いってすごいよね。
出会ったばかりのこんな美人をすぐにいいようにできるだなんて」
と繭は言い出した。
「いや……見合いの定義がおかしいから」
と言いながらも、確かに自分も不思議に思っていた。
たった一度の見合いで、数日もしないうちに、結婚してしまったりするということが。
いや、環の場合、見合いの席にも来ていなかったのだが……。
そのとき、ふと、カウンターの後ろに積み上げられているピカピカした黒いつづらを見上げ、訊いてみた。
「ねえ、前から思ってたんだけど。
このつづら、何が入ってんの?」
「死体」
ははは、と笑う繭に、そうなんだー、とほとりは言った。
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