何処の強姦魔だ

4/42
前へ
/335ページ
次へ
   環に本堂から押し出されたほとりは、繭の店へと行っていた。  古く厚みのあるガラス戸から覗くと、繭はカウンターに倒れていた。  カランカランと鐘の音のするそのガラス戸を開けながら、 「繭ー。  死んでるのー?」 と言うと、繭は、むくりと起き上がりながら、 「死んでたら、もっと驚いてー」 と言った。  少し欠伸をしながら、カウンターの上のやりかけのクロスワードを閉じ、端にあった目覚ましを止めている。 「あ、それ。環のと同じ」 とその目覚まし時計を見て言うと、 「そりゃ、小学校の卒業記念だからね。  環も使ってんの? 物持ちいいね」 と自分も使っているくせに、繭はそう言い、笑っている。 「目覚ましかけて寝てたの?」 「いやあ、クロスワードやってると、よく寝ちゃうからさ。  一応、やる前には目覚ましかけてるんだよ。  客が来たら起こすとは思うんだけどさ」  よく寝ちゃうって……。 「実は嫌いなんじゃないの? クロスワード」 と言ってやると、 「やってる間は他のこと、考えなくていいからねえ」 と言って笑っていた。
/335ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1209人が本棚に入れています
本棚に追加