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美和が女を殺しているのは、残像のようなものだ。
その女の霊が此処で美和の霊に毎夜殺されているわけではない。
「やりたいようにやらせてやれ」
そう言って、神様は何処かへ行ってしまった。
頼りになるんだか、ならないんだか。
やさしくないんだか、やさしいんだか、と思いながら、ほとりは、そっと蔵に近づいた。
隙間から覗くと、明かり取りの窓から青白い月の光が少し差し込んでいる。
なんとなく、そこに入ってみた。
今日は、こけしは回っていない。
神様はさっき出て行ってしまったし、ノブナガ様も居ない。
神様、あんなこと言ってたけど、ああいう光景見てるの嫌なんじゃないのかな、とほとりは思った。
元は人だった人だから、感情的にも嫌だろうし。
神様自体が穢れを嫌うものだし。
それでも、神様が、美和さんが人を殺すのをやめさせない理由は少しわかる気がした。
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