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「……やられたわ」
古い上新粉か何かのようだった。
棚から落とされたものだろう。
溜息をついた環が言う。
「来い。
もう一回、風呂を焚いてやる」
そして、腕をつかまれた。
ほとりは、そのまま、付いていきながら、月を見上げる。
「連行されてるみたいね」
と呟くと、阿呆か、と環は小さく言った。
いつの間にか雲は晴れ、月から届く光が裏山の手前の小さな池に広がっていた。
ぴちょんと跳ねたのは、夜露か、昼間見た小さな蛙か。
それとも――。
見上げた裏山から、風向きか、また、腐臭が漂っていた。
それは、現実に匂ってくるものなのか。
それとも、霊が自分を見つけて欲しくて、放っているものなのか。
環は、こちらの視線を追ったようだった。
が、そのまま、ほとりを連れ、母屋に入っていった。
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