何処の強姦魔だ

12/42
前へ
/335ページ
次へ
   うーむ。  あの箪笥の中にあったのは、大量のミワちゃん人形ではなかったかろうか?  環の沸かしてくれた風呂に浸かり、ほとりは考える。  ミワちゃんを取っ捕まえて訊きたいところだったが、こんなときに限って現れない。 「石川さん」 と石川五右衛門に向かい、呼びかけた。  いや、彼が本当に、そんな名前なのかは知らないが。  名乗らないので、最近、勝手にそう呼んでいる。 「ミワちゃんって、いつから此処に居るんですか?」 「ああ、あのなんか挨拶してる人形」  石川さんは俯き、膝を抱えたまま言ってくる。 「さあねえ。  気がついたら居たねえ」  まあ、霊って時間の感覚がないからな、と思っていると、 「それより、僕が気になるのはさ。  裏の山から感じる腐臭だよ。  あれはやだなー。  窓が開いてると、此処まで入って来るからね」 と言ってくる。  ああ、とほとりは、風呂場の小窓を振り返った。 「じゃあ、開けないようにしましょうか? 此処」 と言うと、 「……カビるよ」 と言う。  霊にカビの心配をされてしまった……と思いながら、ほとりは風呂を出た。
/335ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1209人が本棚に入れています
本棚に追加