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うーむ。
あの箪笥の中にあったのは、大量のミワちゃん人形ではなかったかろうか?
環の沸かしてくれた風呂に浸かり、ほとりは考える。
ミワちゃんを取っ捕まえて訊きたいところだったが、こんなときに限って現れない。
「石川さん」
と石川五右衛門に向かい、呼びかけた。
いや、彼が本当に、そんな名前なのかは知らないが。
名乗らないので、最近、勝手にそう呼んでいる。
「ミワちゃんって、いつから此処に居るんですか?」
「ああ、あのなんか挨拶してる人形」
石川さんは俯き、膝を抱えたまま言ってくる。
「さあねえ。
気がついたら居たねえ」
まあ、霊って時間の感覚がないからな、と思っていると、
「それより、僕が気になるのはさ。
裏の山から感じる腐臭だよ。
あれはやだなー。
窓が開いてると、此処まで入って来るからね」
と言ってくる。
ああ、とほとりは、風呂場の小窓を振り返った。
「じゃあ、開けないようにしましょうか? 此処」
と言うと、
「……カビるよ」
と言う。
霊にカビの心配をされてしまった……と思いながら、ほとりは風呂を出た。
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