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こたつの部屋に入ると、誰かと電話で話していたらしい環が今どき見ない黒電話の受話器を置くのが見えた。
「守村が明日、婚約者を連れて来るらしい」
「あ、そうなの?
わかった」
と言って、行こうとすると、待て、と腕をつかまれる。
「蔵で誰に襲われた?」
「いや……わからないけど。
環は見なかったの?」
と言うと、
「暗かったからな」
と言ったあとで、
「……俺じゃないぞ」
と言う。
いや、そんなこと言ってないじゃないですか、と苦笑いしていると、環は言ってきた。
「ほとり、そろそろ覚悟を決めないか」
「なんのですか」
身構えたせいか、敬語になってしまう。
「お前、嫁いで一ヶ月だぞ。もうそろそろいいんじゃないのか?」
もう一回、なんのですかと問うたら、さすがの環でもキレるかな、と思い、黙った。
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