古道具屋の繭

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「そうか。  あそこのおじさんは、よく子供に菓子を配ってるからな」  俺も小学校のとき、もらったと言い出す。  私は小学生ですか、と思っていると、 「帰ったら、手を洗ってうがいしろ」 と更に小学生に言うようなことを言ってきた。 「はーい」 とダレた返事をして、睨まれる。  はいっ、と返事をしかえ、母屋に行こうとしたが、蔵の横で、足を止めた。  さっき、散髪屋さんに孫を連れて来たおばさんに聞いたのだ。  この蔵の鍵がたまに開いていて、そこを覗くと誰かがこちらを覗いていると。 「もっと怖いことがあったのよー。  でも、言うと、貴女たち、住めなくなると困るから言えないわー」 と日向佐千代(ひむかい さちよ)というそのおばさんは言っていた。  っていうか、笑いながら言わないでください、とほとりは思っていた。  毎日が淡々と過ぎていく呑気な町だ。  あまり変わったことも起こらないので、怪談話も愉快な話題のひとつのようだった。
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