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「しかも、今、誰かに襲われそうになったんだろ?
夫より先に他の男に手篭めにされるとか問題があると思わないか」
「……思いますね」
「さっきから、何故、敬語だ」
距離を置きたいからです……。
ほとり、と環はこちらの目を見、重々しい口調で呼びかけてくる。
「もう腹をくくれ」
「わ、わかりました」
と覚悟を決めて言いながらも、つい、無意識のうちに、そこにあった古いガラスの灰皿をつかんでいた。
昔の二時間サスペンスでしか見ないようなあれだ。
本当に此処、なんでもあるな、と思っていると、ほとりの手にあるその灰皿を見ながら、環は、
「お前、ほんとに既婚者だったのか?」
と呆れたように訊いてくる。
「い、一応そうなんだけど、でもっ」
言い終わる前に、溜息をついた環に、両肩をつかまれ、押し倒される。
ゴンッと灰皿が床の間に当たる音がした。だが、ほとりの手にあるそれには構わず、環は口づけてくる。
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