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いやーっ。
どうしようっ。殴る? 殴らないっ? と自分自身に問いかけながら、灰皿を持つ手に力をこめたとき、環のスマホが鳴った。
「鳴ってる」
「気にするな」
と言われたが、手を伸ばし、えい、と通話ボタンとスピーカーボタンを押してみた。
『あ、環ー。
守村、明日来るんだって?
僕もそっちに……』
すぐに聞こえてきた繭の声に、環が仕方なく、ほとりから手を離し、スマホを取って、通話を切る。
その隙に、ほとりは逃げ出した。
「あっ、こら、待てっ」
逃げながら、いやー、よく考えたら、なんで逃げてるんだろうなーとは思っていた。
恥じらい?
恥じらいかな? と鈍器のような灰皿を膝に抱え、納屋に隠れてみたのだが。
納屋の前では、美和さんは人を殺しているし、よく考えたら、さっきの強姦魔がまだ居るかもしれないし、それに……。
それに、さっきから、横に誰かが――。
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