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ほとりは振り向いた。
あの緑の冷蔵庫と納屋との隙間に、男がひとりしゃがんでいる。
ひーっ、と闇をつんざく悲鳴を上げて、ほとりは男に向かい、殴りかかった。
手から灰皿がすっぽ抜け、納屋の壁に、重い音を立てて当たる。
ひーっ、と男も叫んでいた。
「環ーっ!
誰か居るーっ!」
と叫ぶと、悲鳴と激しい音を聞きつけたのか、環がやってきた。
環は腕組みをして、こちらを見下ろし、
「……お前、俺から逃げておいて、よく、俺を呼べたな」
と言ってくる。
「ああ、えーと……。
逃げちゃったのは……そのー、
恥じらい?」
これは、恥じらい、と男の身体を突き抜け、地面に落ちた灰皿を拾い、笑ってみせた。
納屋の下はむき出しの土になっているのだ。
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