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男の告白により、ほとりと環は早朝、裏山に登っていた。
あまり人目につきたくないが、暗すぎても足許が覚束ず、危ないからだ。
朝の空気は、澄んで気持ちがいいを通り越して、既に痛い。
ほとりが、頬がピリピリするなーと思いながら、細い獣道が急な斜面になっている場所を上がろうとしたとき、前を行く環が無言で手を差し出してくれた。
そっと、その手をつかむ。
いけませんかね? と温かく大きな手をつかみながら、ほとりは思っていた。
こうして、阿吽の呼吸で、手を貸してくれたり。
叱られながら、一緒にご飯作ったりするだけで、形だけ整っていた前の結婚より、よっぽど、夫婦っぽいと私は思っているのですが。
今のままでは、夫婦として、いけませんかね?
だが、口に出したら、今度は自分めがけて灰皿が飛んできそうなので、黙っていた。
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