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明けて月曜日の昼時。菖蒲達は、いつも通りに校舎B棟二階の閉鎖されている屋上に繋がる階段の踊り場で昼食を摂っていた。恵流の姿は勿論ない。
菖蒲とイリスの他には、七色と陽が居合わせている。クッションを敷いたり、階段に腰を掛けたり、壁に背中を預けたりと各々の姿勢を取っていた。
「そういえば、先輩方は例の噂は聞きましたかー?」
段差に座っている陽がらしからぬシンプルなアルミの弁当箱の中身を突きながら、さり気なく話題を提示する。
「『深愛のリプカ』がアップデートするって話なら聞いたな」
成長期真っ盛りの学生たちで熱い争奪戦が繰り広げられ、その後には殆ど何も残らない荒野が広がる昼の購買でも、必ずと言っていいほど売れ残るあんぱんから口を離して反応したのは菖蒲だった。
「今朝は皆様そのお話で持ちきりでしたね」
菖蒲と同じあんぱんを千切って食べていたイリスが、口の中身を嚥下してから情報の出処を明らかにする。普段は情報に疎い菖蒲でも、聞き耳を立てずとも聞こえてくるなら知りもする。
「まあ、知ってますよね。センセーショナルな話ですもんねー。ではでは、こんな話も知っていますか?」
そこで一拍を置いて「ふ、ふ、ふ」と意味ありげに笑う陽に、高い位置から冷たい声が降ってきた。
「あたし達と同じメッセージを受け取った者が他にもいたという話ですか」
「あーっ! 陽が言おうと思ってた事をー! で、ですが、肝心なのはここからで――」
陽の渾身の前振りを砕いた七色は、直立の体勢で紅茶の紙パックを音も立てずに飲んでから。
「進行不可のバグクエストとして認識されていた『この世界の真実を暴け』が進行し、新たな目標『真実のアイを探せ』が設定された事が、あたし達以外の受信者の口から公になりました」
「――もう好きにして下さいなのですよー!」
「それとほぼ同時期に、そのクエストが最初に発注された第一設定世界に継ぐ第二設定世界『深愛のリプカ』がアップデートされるという発表がなされた訳ですが」
そこまで聞いて、菖蒲もイリスも七色の言わんとする所を察した。
「”前回”も”前々回”も、そのクエストが進行した時は必ず『設定世界』に何かしらの変化がありました。今回の更新は、クエストに関連している可能性が高いです」
「そのパターンについては、もちろん俺もイリスも考えてたよ。だから、いずれリプカに潜ってみるつもりだった。でも」
「はい。あたし達だけが知っているパターンを既知していなくても、今回の二つの情報を結びつけるのは誰にでも容易でした」
「どちらにも”アイ”が含まれています。その一致は、偶然というには出来過ぎていますね……」
七色が口にした『クエストに関連している可能性』は、既に多くの生徒達が認知している。
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