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――ドヤ顔してたのに、ウケる。
やんややんやと反証の合唱を聞かされた近重からぶちぃっと何かが切れる音がした。
「霧羽と鶴来の隠し子説よりはよっぽど現実的だろうがッッッ!」
「そうですね。正解ではありませんが」
「てめぇが勿体ぶるのがワリィんだよ」
「あたしも説明に困っていたんです。ですから、ありのまま話します」
身内に下らない嘘を吐きたくない。その心情に則りつつ恵流達の事情を慮るのであれば、出力する内容を選定すればいい。
「とは言っても話せる事は多くありません。この子は菖蒲が寝ている間に部屋に迷いこんでいたらしく、あたしは体調不良の菖蒲に代わってこの子の処遇を学園長に窺いに行こうとしていただけです」
「迷い込むって、この広大な学園敷地内の寮の最上階のロック付きの部屋にか? そんな無茶な」
先ほどまで敵対していた連中も、近重の意見に頻りに首を縦に振っている。
「更にその懐きようは昨日今日のもんでもねー。しかも、霧羽だぜ? 普通の子供なら、一目見た瞬間泣き叫んでも不思議じゃ――」
「そうですね。ですが、無茶でも現実に起きた事です。現実的だろうと、この子はあたしの隠し子でも、親戚でもありません」
毅然と言い放つ七色に、聴衆は真実は疑いながらも問答無用の説得力を感じずにはいられない。あと、怖い。
「ぐっ。けどよ、一体どうやって……」
「その辺りも含めて、学園長に尋ねようと思っていました。それを、貴方がこうして足止めしてくれている訳ですが」
「ああ、くそ。いちいち厭味ったらしい言い方をすんじゃねぇ! わーったから、もうさっさといきやがれ!」
「人の時間を奪っておいて、その言い草。飼い主の顔が見てみたいです」
「おい、霧羽てめぇこの野郎。今はガキの手前かなり抑えてるけどよ。そろそろキレちまいそうだぜ。久しぶりにキレちまいそうだぜ」
「それは面倒ですね。では、あたし達はそろそろ当初の目的地に向かう事にします」
七色が歩き始めると、手を繋いでいる少年もとことこと後を追う。少し歩いて、七色は思い出したように足を止める。
「そういえば、一つ言い忘れていた事がありました」
菖蒲と近重に対する、七色なりの親切を一つ。
「そこで永遠に張り込みをしたとしても、平野恵流が出てくる事はありませんよ」
集団から思い思いに根拠を求める言葉が湧く。
「個人的な事情で、今は学園にいない”そう”ですから」
◇ ◇ ◇
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