四章 よりそう
1/14
37/58

四章 よりそう

 ほろ酔いで眠りにつき、起きたのが十四時頃だった。なんだかいつもより精神的に疲れている自覚があり昨日から寝てばかりな気がする。  まだちょっと眠そうな正宗くんが、リビングで目をこすっている。いつものことながら彼は寝るときも眼帯をしたままだ。 「おはよー」 「おはようございますぅ」  飲んだのは缶ビール一本だけで深酒はしていないので頭は軽い。なんとなくだるいのは寝過ぎたせいか、小刻みに何度も寝たせいか。 「洗濯しますね。天気予報、雨の確率ゼロでしたから干したまま出ても良さそうです」 「今日も天気いいのかぁ。休んでどこか出かけたい気分だよねぇ」 「そうですねぇ。俺、着替えてきます」  正宗くんは自分の着ているシャツを脱ぎながら、洗面所へ行った。いまさら気付くけれどわたしの前で極力裸になるような着替えをしないようにしているみたい。  恋人ではないのだから親しき仲にも礼儀あり、か。わたしだって裸でウロウロするわけにはいかないからしない。当たり前だけれど。 「お腹すいたなぁ」  洗濯物を干すのはわたしがやろう。あくびをしながら両腕をうんと上に伸ばした。  洗濯機を回しているあいだに先にシャワーを浴びる。洗濯は時短モードなだすぐ終わるだろう。 「先輩!」 「うお! なに?」  びっくりした。バスルームの外からの声に驚いてシャワーを止める。 「お米がありません。ストックありますか?」  わたしはバスルームの扉を少しだけ開けて顔を半分出した。そこに正宗くんがいた。 「えと、玄関の押入にあるはずー」 「了解しましたー」 「ごめんね」 「へへへ」  正宗くんがニヤニヤしている。 「なによ」 「色っぽいですね。先輩」 「な、なに言ってんの!」  バシンと扉を閉めた。バカじゃないの、からかわないで欲しい。夜のラウンド一人で行かせるからな。昨日はあんなに落ち込んでいたくせに。 シャワーのせいじゃないもので顔が赤くなるのを感じ、同時にむかついた。  湯上がりにゴソゴソと着替えをして出て行ったら、政宗くんは食事の準備をしていた。 「ご飯もうすぐ炊けますよ。お腹空きましたね」  テーブルにはもう食事の準備が整っている。昨日のナポリタンに卵焼きが添えてあり味噌汁と漬け物が出ていた。ナポリタンは残り少ないからおかずの役割をしていて、炊き立てご飯となると炭水化物と炭水化物だけれど、美味しければなんでもいい。 お腹がググウと鳴った。残り物でこんな風に用意してくれると嬉しい。 「洗濯、わたしやるから」 「ああ、すみません」  髪の毛をタオルドライしながら、テーブルについた。 「俺はこれ食べたらシャワーしてきますね」 「じゃあそのあいだに洗濯物を干すよ」 「はい。じゃあお願いします」  夫婦の家事分担って、こんな感じなのかしら。別に夫婦じゃないけれど。 「昨日、帰りにガソリン入れておきました」 「え、そうなの? ありがとう」  入れるのを忘れていた。 「正宗くん本当に気が利くよね。女の人みたい」 「そうですか? 男女関係ないですよ。まぁ、ひとり暮らしをしていたしひと通り自分ひとりでできますから、普通にやっているだけですよ」 「わたしもひとり暮らし長いですけど」 「できるひとや気付いたひとがやればいいんですよ。こういうのは」  そんなもんなのかな。既婚の友達は旦那さんがなにもしないとか、家事を手伝ってくれないとかいう愚痴をいうひとが多い。 「いいお嫁さんになるよ」 「俺は男ですけど」 「ご飯も美味しい」 「ご飯は炊飯器が炊くんですけれど」 「褒めているのよ、素直じゃないな」  炊き立てご飯をハフハフ言いながら口に入れた。 「漬け物、味噌汁、白いご飯。日本の心だね。最高」 「じゃあ、俺と結婚したら先輩はずっとこんな最高の生活ですね」  政宗くんはニコニコしながら卵焼きを食べている。 「……あのさぁ」 「なんですか?」 「そういうこと言って、からかうのはやめてよ。思ってないでしょ、そんなこと」 「からかってませんよ」 「いいから早く食べる。仕事に遅れるよ」  まったく。先輩をからかうのもいい加減にしろ。わたしは乱暴ご飯を頬張った。  食事を終えて、正宗くんはシャワーへ向かったのでわたしは食器をシンクに放り込み止まった洗濯機から衣類を取り出す。サクサクとこなしていこう。先日、取っ手がぶっ壊れてしまったランドリーバスケットを抱えてベランダに出た。本当にいいお天気なので深く呼吸をした。  洗濯物を手早く干すと、シャワーの後になにもしていなかった顔面に化粧水をぶっかける。簡単だけれどいつものメイクをして、着替えたら出発だ。
37/58

最初のコメントを投稿しよう!