2章「子供っていいよな、希望の塊って感じがする」

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「こんにちわあ。」 インターホン越しに、階下から子供の声がした。 テレビから目線を上げる、午前11時。 一体誰だろうかと首をひねれば、ぼんやりと天井を眺めるばかりだった烏羽が起き上がった。 「ちょっと行ってくる。」 「いいよ、横になってな。」 骨の目立つ肩を押とどめれば、いいやと首が振られた。 「多分知り合いだ。」 少し顔を綻ばせながら言うものだから、大人しく手を引いた。 それでも、まだふらつきが残る烏羽の後を追ってついて行く。 玄関の前には、小麦色に焼けた少年が立っていた。 「お姉ちゃんこんにちわ。」 「翔太君こんにちは。」 翔太君と呼ばれた少年は、少しもじもじした後、「はじめまして。」と俺にも挨拶を返してきた。 こんな瑞々しい友達が目の前の友人にいたんだろうか。と考えながら、初めまして。と返す。 「この子は翔太君。前に依頼で知り合ったんだ。」 「翔太です。6歳です。」 「多木です。23歳です。」 とんちんかんな受け答えをしてしまった。烏羽が少し笑っている。 「今日は打ち合わせをする予定だったんだ。」 烏羽が翔太君を上がるように促す。小学生にしては、ずいぶん背が小さい印象だった。健康的な肉がついているが、道端で見かける小学生よりは線が細い。 「なんの打ち合わせ。」 「冬秀さんへの感謝のプレゼントの打ち合わせ。」 ふふふ、と子供が笑う。ふらついた烏羽が、それでも楽しそうに翔太君の肩に手を置いて階段を昇っていく。 あいつそういえば、子供の扱いうまいんだっけ。 なんとも残酷なことを思い出しつつ、玄関のカギを閉める。 初夏の熱気が足元で途切れて消えた。
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