青錆 風猶という少年は平凡以下

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青錆 風猶という少年は平凡以下

  「自分の人生は、他人と比べる必要などない」 「自分の人生は、あまりにも詰まらない」  僕の思考は、常にこれが堂々巡りしている。  昼休み。  他のクラスメイト達は仲良しグループで机を囲い合って昼食をとる訳だが。  僕にはそんな相手などいない。  ようするに、ぼっちだ。    でも、よくクラスを見てみるといい。  この昼休みを一人で過ごしている奴は、他にも何人かいるだろう。  ぼっちでいる事は、別におかしい事じゃないのだ。 「また一人でお昼?」  そこへ、一人の女子生徒が現れた。 「なんだよ。一人だけど、何か文句あるかよ?」 「いえいえ別に? しょうがないから、私がご一緒してあげようと思ってね?」  そいつは、可愛らしい笑顔を浮かべてそう言った。  そんな、ラブコメ漫画みたいなやりとりをしているのは。  僕の"右斜め前の席"にいる男子生徒だ。  そう、残念ながら現実は非情だ。  僕はそんなリア充とは程遠い。    その時、教室のドアが開く。 「あー、いたいた! もう、なんで電話したのに出ないのさ!」  慌ただしく教室のドアが開き、また一人の女子生徒が現れたかと思うと、そいつは堂々と教室へ侵入してきた。 「どうせ、昼休みはぼっちなんでしょ? お兄ちゃんと一緒に遊んでくれる相手なんていないでしょ? ほら、だったら一緒に来てよ!」  そう、こいつは極度のブラコン妹なのだ。 「あぁー! わかった行くから! 教室でそういう事を言うな!!!」  そう言って教室を出ていくのは、僕の"2つ前の席"にいる男子だ。  ・・・そう、僕の"2つ前の席"にいる男子だ。  僕には妹などいないし、血の繋がってない義妹なんてものも当然いない。    現実は非情である。  そう、今までの茶番の登場人物に、僕は含まれない。  僕はぼっちだ。味方などいない。  漫画みたいにそう都合よく仲良くしてくれる女の子はいない。 「自分の人生は、人と比べる必要などない」 「自分の人生は、あまりにも詰まらない」  僕の思考は、常にこれが堂々巡りしている。     青錆 風猶(さおさび ふゆう)という名前の通りだ  世界から見て、僕はただの錆び。  周りから浮いていると言うよりは、沈んでいるというのが正しいが。     とにかく、僕は何をしても、どうあがいても普通の・・・いや"普通以下"の学生だった。  これは別に、ラノベ主人公の肩書き通りに自己紹介してください、とか言われた訳じゃあない。  "この人生の主人公は、本当に僕なのだろうか"と、そう疑問に思ってしまうだけだ。
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