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ジメジメした洞窟を奥へと進むと、音は段々と大きくなってきた。
岩を砕いている様な音だが、それに混ざって、ゴォォォ、という風が吹き抜ける様な低音も聞こえる。
そうして洞窟を道なりに進んでいくと、やがて大きな広場に出た。
結晶達がぼんやりと光で照らし、天井や床には、つららのように伸びた岩石が生えている。
初めて見たが、いわゆる鍾乳洞と言われる洞窟だろう。
下に降りるには、2階建て民家くらいの高さがあるだろうか。
こんな洞窟で、無理に降りようとして怪我をするのは、あまり良くないだろう。
幸い、まだ歩けそうな道は続いているので、ここから広場に降りる事はないだろう。
その時。
「げっ・・・」
広場の奥に、さっきの音の正体を発見した。
黒くて長く、こちらからは距離は離れているため、正確な大きさは分からないが、かなりデカイ。
巨大な蛇にも見えたが、その身体には、不規則な大きさの脚が何本か生えている。
見た事もない生命体が、岩を崩しながら蠢いていた。
「おいおい、なんだよあんな怪物、見た事ないぞ・・・」
その頭部には、縦ではなく横に開く口を持っており、牙で岩石を砕きながら、何かを追いかけている様に見える。
何を追いかけているのか、謎の生命体が向かっている先に視点を移すと。
人影が見える。
少女が、軽い身のこなしで岩の隙間を潜り、怪物から逃げている。
とんでもない状況ではあるが、人間がいるという事実に安心感を感じた。
怪物も少女も、まだ僕の存在には気付いていないだろう。
少女には申し訳ないが、僕はここから逃げよう。
武器も何も無しに、あんな巨大な怪物を相手に出来る訳がない。
多分、剣や銃があっても無理だろう。
それにあの少女、意外と余裕で逃げ回っているし、下手に関わらない方がよさそうだ。
そう思い、道なりに進もうとした時。
「・・・ん」
地面からドライアイスから出る様な白い煙が沸き出しており、道の奥に吸い寄せられている光景が見えた。
白い煙に導かれて、奥へと進んで行くと。
するとその先は、小部屋の様な空間になっていた。
そしてその奥には。
「・・・何だ、アレ」
黒い粘液で出来た巨大なクモの巣の様な物体に、何かが絡まっている。
「あれは、剣?」
黒い粘液に絡まっていて良く見えないが、それは剣の様に見えた。
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