腐竜の黒剣

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「・・・戻った?」  刀身が無くなり柄だけとなっていた魔剣が、元の黒い刃を再生させる。  最初に見た時と同じ、刀身の太い魔術的な禍々しさの刃である   「も、戻ったのか?」 「す、すごい・・・それが魔剣の元の姿、ですか?」  少女達二人も、呆気にとられた顔でこっちを見ている。  すると、不良少女が。 「おい。貸せ」  まぁ予想通りの展開だ。 「・・・ほい。どうぞ」  復活した剣を差し出すと、不良少女はにやりと嬉しそうに笑って、剣を受け取った。  「ほらな? ぶっ壊れたものはとりあえず叩けば―――」  だが、少女が剣を握った瞬間。 「はぁ・・・!?」    剣の刃が、みるみるうちに砂の様に砕け始めた。   「おいおいおい、待て待て待て! なんで・・・!?」  そしてやはり、剣は柄だけを残して、砂となり消え去ってしまった。   「おい、どうなってんだよこの剣!!! ふざけやがって・・・!!!」  また柄だけの姿となってしまった剣。  それを、不良少女は乱暴に地面へ叩きつけた。  そして、また魔法を放つのだろう、剣の柄へ向け手を翳した。   「ッ・・・!?」    さっきみたいに、魔法の稲妻で剣を刺激すれば元に戻ると考えたのだろう。  もしくは、ただの八つ当たりかもしれないが。 「シ、シルイちゃん!? ち、ちょっと待ってください!!!」  と、不良少女が魔法を放つ前に、少女がその腕を掴んで阻止した。 「なんだよ・・・」  今彼女を無理やり止めれば、更に激怒するのではないかと思ったが、そんなことは無いらしい。  不良少女はめんどくさそうな様子で溜息を吐いて、腕を下ろした。 「もしかしてですけど、その剣・・・所有者を判別しているのではないでしょうか?」 「はぁ・・・?」    剣が所有者を選んでいる?  それは、つまり。  大人し目な少女が、剣の柄を拾い上げる。  そして、僕の方へと近付いてきた。 「あの、試しに・・・剣を持ってみてくれませんか?」  遠慮がちな様子で、剣の柄を僕に差し出す。   彼女の推測は理解した。  剣が所有者を決めている・・・ つまり、最初に剣を握った僕が、剣の所有者である。  そういう推測だろう。    柄を受け取る。     すると。  先程と同じ様に、剣の柄から黒い粘液が沸き出し、やがて、刀身の太い黒い刃を形成する。  数秒程で、元の黒い刃が出来上がった。   「やっぱり。この魔剣は人を判別しています。つまり、貴方を所有者だと認識している様です」 「・・・なるほど」    剣が人を選ぶなんて、なんともファンタジーらしい設定だ。  やっぱり、ここは異世界で間違いないだろう。そう確信した。    その時、乱暴にドアが開く音が響いた。  不良少女が、入口のドアを蹴とばしたのだ。 「チッ・・・」  不良少女は舌打ちを吐いて、一度こちらを睨み、入口から出ていった。 「あっ・・・!? シルイちゃん!?」  大人し目な少女が、慌てて追いかける。 「突然、何処行くんですか!?」   「うるせえな。魔剣だろうがなんだろうが、使えないなら、もう要らねえよ」 「あ・・・」     そう言い、去っていく不良少女。 「し、初対面ですのに、失礼しました・・・」   気まずそうな様子で、少女が戻ってくる。   「いや、別に。僕はなにも」  この空気、どうすれば良いのかわからないので、少し笑ってみたが。  多分、苦笑いになってしまっただろう。      「シルイちゃん、ちょっと乱暴ですけど、本当に悪い子ではないんですけど・・・」 「・・・そうなんだ」  まぁ、なんだ。  そのシルイという少女に、僕は喉元にナイフを突き立てられて脅された訳だけども。 「それで、その・・・貴方は何者なのでしょうか?」  少女が訪ねてくる。  そういえば、まだ自己紹介をしていなかった。 「あー、僕の名前は青錆風猶といいまして。それで―――」     ・・・なんと言えば良いのだろう。  別の世界から来ました、とか言っていいのか?     そう僕が悩んでいると。  また、ドアが乱暴に開く音が響いた。  ぞろぞろと、3人の少年少女が入り込んで来る。 「動かないでください。そして、武器を捨ててください」  そして、警察の決まり文句みたいな事を言ってきた。  彼らは、学校制服の様な整った衣装に身を包んでおり、片手には短い杖を、もう片手には剣を握っていた。
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