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異世界だろうが、この世はごみ
この"第4魔導学園"では、どうやら戦闘の教育を基本に行っているらしい。
簡単な読み書きや計算も教えているようだが、学ぶ事の殆どは、武器や魔法の扱いや、戦闘の訓練等であった。
この国の事情はよく分からないが・・・。
テイナという青髪の少女は、僕と同じ程度の年齢だったが、
警備生徒という、警察にあたる職に就いていた。
話によれば、この歳(高校生)なら兵士や狩猟者として働いているのは当たり前との事だ。
元の世界でも、高校生で既に働いたり、バイトを詰め込んでる奴もいたが、
武器を取って戦う事が当たり前というのは、常識の差を感じるところ。
「・・・」
まぁ、そんな僕の手元には"魔剣"と呼ばれる武器がある訳だが。
テイナと別れた後、言われたとおり武器保管室に行くと、この魔剣に合った鞘を貰う事が出来た。
まぁなんだ。この魔剣は僕にしか使えないということだが、
底辺レベルの成績しかないくせに、こんな大層な剣を抱えて歩くのは心地よくなかったので、少し安心した。
実際、廊下ですれ違う生徒達が興味津々な顔で見てくるので、とても恥ずかしかった。
さて次は寝床の確認でもしておこうか。
立派な学園だけあって、ちゃんと寮も備え付けてあるとの事。
ちなみに完全個室、シャワー付き。
・・・怪物の住む洞窟に来てしまった時は、これから一体どうなるのかと思っていたが。
それなりに普通の生活が出来そうで一安心である。
***
テイナから貰った学園の案内を頼りに、Dランク生徒の寮へ到着した。
寮はランク毎に別れているらしいが、Bランクまでは部屋の設備に差が無いとの事。
ランクが低いからと言って、めちゃくちゃボロい部屋を割り振りされるとかはないらしい。
良い配慮だ。
「さて僕の部屋は」
指定された部屋は、Dの42号室。
ドアに書かれた番号を辿っていく。
その時。
「・・・っ!?」
頭に冷たい感覚。
何か液体が降りかかってきたらしい。
色は無色透明なので、恐らくただの水だろう。
「なんだ・・・?」
雨漏りでもしてるのかと思ったが、
振り返ると、2人の男子生徒の姿があった。
2人は目が合うと、一瞬くすくすと嫌らしい笑いを浮かべ、何か会話をしている。
嫌がらせか。
嫌な予感がプンプンするが、その2人はそれ以上何かすることはなかった。
普通の生活が出来そうで一安心と言ったつかの間だな。
幸先悪いと思いつつ、Dの42号室に辿り着いた。
ドアのロックを開くには、学生証を使って―――
と思ったが、何故かドアは少しだけ空いていた。
おかしいと思い、中へ入る。
「・・・うっ」
すると、僕を出迎えたのは、ゴミ。
ゴミ、壊れた家具、ゴミ、何かが入っている袋、最早説明しようがない謎の物体。
嫌な予感はしていたが、最悪な状態であった。
「あれあれ、ゴミ捨て場で何してるんすかぁ?」
後ろから、少女の声が聞こえる。
「見た事ない奴・・・あんた誰?」
クリーム色の髪をした少女が「なんだこいつ、邪魔くせぇ」みたいな顔で立っていた。
「今日、この学園に転入してきた」
「ふーん。あ、もしかしてこのゴミ捨て場が、割り当てられた部屋っすか? うっわー、かわいそ!!!」
と、少女は全く同情してなさそうに、へらへらと笑う。
そして持っていたゴミの袋を、僕の部屋に放り投げた。
「そんじゃあ、大変だろうけどがんばってねぇー」
「はぁ」
いや、今まさに目の前でゴミ捨てた奴が言う事じゃないだろうが。
おまけに、少女は「あ、ついでにこれも」と、手に持っていたコップを投げつけてきた。
コップは僕の肩に当り、少し残っていた液体が飛び散る。
「・・・あぁ、クソ」
用事が済めば、少女はさっさと何処かへ消えていった。
さてどうしたものか。
このゴミを片づけない事には生活できないだろうが、
あまりにもその量が多すぎる。
一人で持てる程度のゴミならまだしも、
二人ですら持てるか怪しい程、デカイ家具まで投げ捨ててある。
「こういう時は、警察に言うもんかね」
早速で申し訳ないが・・・。
これは警備生徒のテイナにでも相談した方が良いだろう。
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