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別れたくない。というより、“まだ”別れるわけにいかないのだ。……まだ、真の目的を果たしていないから。 そんな由貴の想いなど知る由もなく、司も立ち上がって財布を取り出した。 「俺は君に相応しくないよ。君みたいに素直で良い子は、もっと誠実な人と付き合うべきだ」 「何ですか、それ…… 司さん以上に誠実な人なんて見つかりませんよ」 「……ありがとう。でも本当に、今日で最後にしよう。それじゃあ、おやすみ」 「は、えっ? いやいやいや! ちょっ待って司さん……!」 ほとんどパントマイムのような手の振り方で引き止めようとしたが、司は支払いを済ませて店を出て行った。取り残された由貴は不自然な動作で椅子に座る。 頭の中でたくさんの感情がひしめき合い、現実を受け入れることができない。 いくらなんでも突然過ぎた。 「あぁ、嘘……」 力なく項垂れて、額を手で押さえる。由貴はうわ言のように呟いていた。 まだ……いや、まだ駄目だ。 まだ彼とは別れられない。……果たすべき復讐を遂げていないんだ。
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