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 五月の連休が明けても、鍵は箱に入ったままだった。  毎回確認する癖が付いてしまった自分に、さつきはいささかげんなりする。いっそ忘れてしまいたいのに、ついつい気になって箱を覗いてしまうのだ。  不可解なことに、今度こそ無くなっていてほしいと思う反面、おそらくまだ残っているだろうと確信している自分もいる。結果的にその予想が外れたことはなかった。取りに来てほしくないわけでは、決してないのに。  無機質な光沢を放つ、「S」のキーホルダー。細かな傷がいくつも付いた、ありふれた自転車の鍵。  それは、さつきの脳内に楔のように打ち込まれたまま。ずっと、箱の中に鎮座していた。  チャイムが四限目終了を知らせると、教室はにわかに騒がしくなる。  お弁当を持参した生徒は仲の良いグループでまとまり、購買へ向かう生徒が足早に教室を出て行く。四月のうちはどこか余所余所しさがあったさつきのクラスも、今はすっかり打ち解けた雰囲気になっていた。 「てかさぁ、テスト、マジで嫌なんだけど」  席の近い女子たちとお弁当を広げていたさつきは、クラスメイトの嘆きに深くうなずいた。 「わかる、ほんとそれ。中学より教科多いし、ヤバくない?」 「もう勉強してる?」 「まっさか。全然やってないって」  他の女子も、箸を動かしながら口々に同意する。  中間テストは五月末である。あと二週間と少しだ。まだテスト期間には入っておらず部活動も通常通りだが、高校に入って最初のテストということもあり、皆なんとなく周りの出方を伺っている雰囲気がある。図書館で自習する生徒も、徐々に増えつつあった。
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