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少年はいつも、同じ席に座っていた。
広い図書館の一番奥。立ち並ぶ書架の間をいくつもすり抜けた先に、その席はある。
人が通りにくいことを考えれば穴場と言えなくもないが、本を手にした生徒も、自習のために訪れる生徒も足を向けることの少ない場所だった。窓に面していて、デスクライトがないせいだろう。時間帯にもよるが、夕方に本を読んだり勉強したりするには、少々薄暗さを感じる。
あくまで文字を追うには、だが。
少年は一冊の本も読んでいなかった。
問題集やノートを広げることも、スマホを取り出すこともなかった。
イヤホンを耳に捻じ込んで、好みの音楽に身を任せることもなかった。
寝ているわけではない。目は開いている。
手は太腿の上に置かれ、口は僅かに開いていたが、何の音も発しない。
視線の先にあるのは、窓の向こうの暮れかけた空だけ。
少年はいつも、同じ席に座っていた。
まるで、海底に沈み込んだ貝のように。何もかもを閉ざして。
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