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 テストまで二週間を切ると、図書館に来る生徒は一気に増える。 「すごい人ですね」  どんどん埋まっていく自習スペースを見ながらさつきが言うと、司書の先生が答えた。 「一週間前になるともっと増えるわよ。席、取り合いになるんだから」 「そんなにですか……」 「普段から、もう少し本を読みに来てくれるといいんだけどねえ」  でも、学生が図書館を勉強場所に選ぶのは、今も昔も変わらないわね。  盛況なのはいいことだ、と司書は屈託なく笑った。  それとなく一番奥の席に目をやると、まだ誰も座っていない。薄暗いのがマイナスポイントなのか、意外にも自習場所としては不人気のようだ。  自分でもよく分からないが、さつきは何故かほっとする。  他の委員にさりげなく聞いてみたところ、例の男子生徒は火曜日以外には来ていないらしい。決まった曜日に、決まった席。何か、彼なりの理由があるのだろう。指定席ではないので違う生徒が座っても何も言えないが、ここまで来ると彼のために空けておいてあげたい気持ちになってしまう。  鍵は変わらず箱の中にある。  キーホルダーの「S」と、事故に遭って入学することが叶わなかった同級生の名前。  普通に考えれば、単なる偶然だろう。それなのに、つい結びつけて考えてしまった――具体的に言えば「幽霊」の二文字が頭をよぎってしまったのは、あの男子生徒の表情のせいかもしれない。
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