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「逃げられたな」
「向こうからすれば、逃がしてやった……だろう」
「ああ、そんな感じだ。俺たちは全力を出したのに、あいつは遊んでいるようにしか見えなかった。いくら何でも強すぎやしないか?」
チャーリーは頭の中で状況を整理し、一呼吸おいて呟く。
「新たに作り出された六人の中で、一人だけ飛び抜けて強い力を持つ飛緑魔が居たと伝えられている」
「それが、今の姉ちゃんって訳か」
「一つ捕捉しておこう。僕の先祖は、その強い飛緑魔から力の一部を奪って封印した」
「力の一部を封印したって言うのは、封印の書の事だよな。つまり、あの飛緑魔の力が俺たちの中にあるのか? 言われてみれば、妙に懐かしい感じがしたような……」
「僕も感じた。恐らく、奴が一番強い飛緑魔という推測は間違っていない。すぐにアルファたちを呼んで、対策を立てよう」
二人はアルファに連絡を入れ、スクランブル交差点を後にする。
屋敷に戻ると、既にアルファとブラボーが部屋で待機していた。
「早かったな。エコーとフォックスは?」
「僕ならここにいるよ」
部屋の隅に視線を移すと、エコーが白猫のジルに餌をあげている。
「おっ、ジルじゃないか。今日も来てたのか」
デルタが近づいて頭を撫でると、ジルは嬉しそうにゴロゴロと喉を鳴らした。
「ブラボーも撫でてみろよ」
「俺は遠慮する」
「何でだよ」
「苦手なんだ、言葉が通じないし……」
ブラボーにしては珍しく弱気な声を出し、少しずつ離れて行く。理論で相手出来ないから苦手なのだろう。
「ほれほれ、可愛いだろ」
「止めろ、近づけるな」
「そんなに逃げなくてもいいのに。それにしても不思議な猫だよな。最初はここで飼ってる猫かと思ったぜ。いつの間にかみんなに可愛がられてるし、どこから来てるのか全く分からない。地下室を見つけたのもこいつだったな。そう言えば、フォックスはどうした? いつも、フォックスが餌をあげてるだろ?」
「どうしても外せない講義があるらしく、後で話を聞くと言っていた。それより、早くその猫を放せ」
床に降ろされたジルは全員の顔を見回す。遊んでくれるフォックスが居ないと分かったのか、勢いよく部屋を飛び出して行った。
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