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「デルタらしいなあ。僕はね、デルタみたいに目標を持って生きたいって考えてた。だから、何を目指そうかずっと悩んでたんだ。それで、一緒に住んでる猫たちを見て思った。いつまでも一緒にいたい……獣医師になって、大切な命を繋いでいきたいって」
「最高じゃねえか! そうだよ、フォックスは一人じゃない。家に帰ればたくさんの家族が迎えてくれる。それに、俺たちだっている。仲間の夢は全力で応援するよ。飛緑魔の件は、チャーリーに出来る範囲で協力するって伝えておく。俺だって仕事を抜けてまで協力は出来ないからな。だけど、ここぞって時は頼むぜ」
「分かってる。僕たちは仲間だからね」
デルタは立ち上がって拳を付き出す。フォックスも拳を作り、デルタの拳と合わせて微笑んだ。
「やる気出てきたぞ。俺は仕事場に顔出してから帰るよ。じゃあな」
「うん、じゃあね」
軽い足取りで駆けて行くデルタの背中を見つめ、そのまま視線を落とす。すると、白猫が足にすり寄っていた。
「あれっ、ジル? 僕だけ屋敷にいなかったから、探しに来たの?」
ジルは小さく鳴き声を上げ、フォックスから離れて振り返る。その仕草は、どこかへ誘っている様にも見えた。
「何か伝えようとしているのか?」
後ろについて行くと、ジルはブランコの前で立ち止まる。
「わあっ、白猫だ。可愛い」
ブランコに乗っていた少年が駆け寄り、ジルを優しく抱きかかえた。
「この猫、お兄ちゃんの家の子?」
「違うけど、友達だよ」
「そうなんだ。あっ、こら。顔を舐めちゃダメだよ。くすぐったいってば」
微笑ましい光景だが、フォックスは小さな違和感を覚え、辺りを見渡す。
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