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「そうか……君、名前は?」
「海斗だよ。お兄ちゃんは?」
「みんなからは、フォックスって呼ばれてる。あだ名って言うか、僕の友達が付けてくれたコードネームなんだ」
「それって探偵バトル? お兄ちゃん、探偵なの!?」
ずっと俯いていた海斗が驚いた表情で見上げる。素直な感情を表してくれた事が嬉しくて、フォックスは話を合わせた。
「まだ駆け出しだけどね。でも、表向きは普通の大学生だから内緒だよ」
「ゲームはやった事無いけど、アニメは見てるんだ。ねえ、探偵って世の中に一杯いるの?」
「ああ、いるよ。どんな難しいミッションでも完璧にやり遂げる、凄腕の探偵だっている」
「報酬次第ってやつだよね。いいなあ、僕も大きくなったら本物の探偵になりたいなあ。謎を解いてさ、悪い奴を倒すんだ」
「僕で良ければ色々と教えてあげるよ」
海斗は興奮しながら「本当!?」と叫び、子供らしいとびっきりの笑顔を見せてくれる。アルファが声を掛けてくれた時、僕もこんな顔をしていたんだろうなと笑いが込み上げ、意識せずに笑顔を返していた。
二人が仲良くなるのに時間は掛からず、フォックスの家で探偵の話をしたり、飼い猫たちと遊ぶ日々が続く。
学校が終わってから夕方までの短い間だったが、海斗とフォックスにはとても大切な時間になっていた。
そして、半月ほど経ったある日。
早朝からお菓子の箱を抱えた海斗が訪ねて来た。
「こんなに朝早くからどうしたの?」
「相談に乗って欲しいんだ」
そう言って、お菓子の箱を開ける。中には千円札が数枚と、小銭がたくさん入っていた。
「これは?」
「貯金箱だよ。お年玉とか、たまに貰えるお小遣いを貯めてる」
「凄いね。これだけあれば、ゲームや玩具を買って友達と遊べるよ」
分かって無いなと言いたそうに、海斗はため息を零す。
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